社会福祉法人(福祉・介護・保育サービス)職員のための『副業』の心得
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厚生労働省は2019年3月にモデル就業規則改訂版を公表しました。

モデル就業規則(厚生労働省)

モデル規則の第68条に記載されているように、副業・兼業は認められる時代になりました。

会社にもよりますが、副業・兼業の許可には一定の要件を設け許可制となっているケースが一般的です。

副業の魅力とは?

働き方改革が昨年の4月から始まり、一定以上の年次有給休暇の取得が義務付けられました。

そのため、休暇を活用して副業を考えることも増えてくるでしょう。

また、定時に退勤して勤務地の近くで2時間程度のアルバイトを行うことも考えられます。

皆様の中には、2時間のサービス残業をするなら、2時間のアルバイトを選択した方が収入も増える上に、サービス残業の束縛から自由になると考える人もいるかも知れません。

その他にも異なる業種の人と出会い、違う世界を体験できるワクワク感もあるかも知れません。

例えば、接客業の場合は、本業と異なった観点から接遇マナーを学ぶよい機会とも言えます。

副業を通じて、本業である福祉や保育の現場が「人の支援をする心が温かくなる職場」であることを再認識するキッカケになることもよい効果として考えられます。

副業はバレる?バレない?

昨今の働き方改革の一環で、副業を許可するような会社が増えてきています。

しかし、いまだに副業禁止の会社は多くあります。

そのため、副業を志す多くの人たちは「できればバレたくない」と思っていることでしょう。

福祉や保育の業界の場合、正社員として働く場合に副業をして良いかどうかは、通常、施設や事業所によって異なります。

具体的には、それぞれの事業場ごとに作成している就業規則に規定されているケースが一般的です。

もし、副業不可であっても以前でしたら、副業先の会社に「バレないように処理してください」と頼めば、バレないようにできたようですが、近年では勤務先にマイナンバーを申告する必要があるので、副業がバレる可能性は大いに高まっています。

ただ、実際には、会社側がマイナンバーを使って社員の副収入の内容までを直接知ることはできませんし、確定申告を行い「住民税を自分で納付」することにより、経理担当者等が住民税を天引き処理する際に気づかれるのを予防することはできます。

しかし、副業を禁止している会社において、もしそれを破った場合、減給や懲戒処分などの大きなペナルティを受けることになるかもしれません。

将来的に大きなリスクを抱えながら副業をするよりかは、本業先にも副業先にも別の仕事をする旨をきちんと伝え、分からないことは管理者や上司に質問し確認・了解を取って置くことが本来は望ましいと考えます。

本業に迷惑をかけないという視点

副業に没頭し、意識が散漫になってしまったがために本業に迷惑をかけてしまうことは避けたいところです。

以下では、主に3つポイントに絞って注意事項を解説します。

本業の機密情報の漏洩・流出に注意する

会社側が副業をする職員にまず留意して欲しいのは、機密情報の漏洩・流出についてです。

例えば、2時間のアルバイトでも、アルバイト先の仲間などに職場の人間関係の悩みなどを相談することも考えられますし、アルバイト先での気の緩みから本業の機密情報を話してしまう可能性もあります。

また、昨今のインターネット上のコミュニケーションが活発に行われている状況では、ブログやSNSにより自分が経験した実例を詳しく紹介したいがあまり、過剰に情報を流出させてしまうおそれがあります。

(機密情報の流出例と会話例)
職場の人間模様(理事長や施設長、同僚などの年齢・居住地・家族構成・性格など)
「うちの理事長は○○町の豪邸に住んでいて、なんと高級車が3台!今○○才の息子が来年あたり入職するらしい。」

職場で発生した事件・事故の内容(特に事実関係があやふやで不正確かつ公表されていない情報。)
「こないだうちの施設で預り金の紛失の騒ぎがあったんだけど、どうやら最近休みがちの事務職の○○さんが犯人って噂だよ。」

法人の経営状況(事業計画や財務状況)
「今度あそこの空き地を買い取って○○事業所を立ち上げる予定なんだ。より○○銀行の担当者と施設長が打合せをしていてね。」

機密情報の漏洩・流出によって、本人も会社も大きな損害を受けてしまう可能性も考え、慎重な取扱いを意識するようにしましょう。

本業は対人サービスであることを意識する

副業が、ストレス解消やスキルアップ、生活の豊かさにつながることはとても望ましいことです。

ただ一方で、過度な副業により、体調を崩したり、本業への集中力が途切れたり、といったケースも多々あります。

介護や障害、保育サービスの現場で働く人々は、多くの場合、利用する方々の直接処遇に携わっています。

疲労の蓄積や副業における不安などによる一瞬のミスや見落としで、重大な事故や事件を起こしてしまうことは、絶対に避けなければなりません。

仕事の上では、法人や施設の教育や職員間のサポート体制といったものが当然大事なことではありますが、副業を始める上では、各々の職員が自分の体調やメンタルを整えて本業に向き合うという姿勢を再認識しましょう。

本業は法定基準に従って運営されている

福祉サービスの多くは、法令等の基準に従って必要な人員数を確保しなければなりません。

この基準を違反してしまうと、上記のような利用者サービスの低下は当然ながら、自治体から介護報酬等の返還が命じられ、最悪の場合には指定の取消(=事実上の事業所閉鎖)にまで至るケースもあります。

そのため、経営・運営サイドは、日々の人員体制に対して非常に敏感かつ慎重になっています。

副業にのめりこみ過ぎて、納期や健康状態などの都合で突発的な休みを頻繁に取ったりすると、会社や事業所の経営そのものに大きな影響を与えてしまう可能性があります。

もちろんプライベートの時間は本人の自由ですし、休暇の取得は労働者が有する当然の権利ではありますが、最低限のマナーとして、本業に与えるおそれのある影響も意識するようにしましょう。

副業のための準備・心構え

アルバイトとして別の会社などに雇用されながら働く場合であっても、業務委託等によりある程度は自身の裁量で在宅・外勤で働く場合であっても、副業を始める前に考えておくべきことがあります。

準備①目標金額の設定

副業を考える場合、最初から「月収100万円」「本業を超える年収」などを目指すことは無謀と言えます。

一方で、あまりにも少なすぎるのも、モチベーションの維持が難しくなります。

以下のサイトの調査によると、希望月収としては「5万~10万円未満」が最多と結果が出ています。

(参考サイト)
副業・兼業で稼ぎたいのは月にどれくらい?~「働き方改革に関する意識調査」~(日経キャリアNET)

まずは自身の生活状況などから考えて、プラスアルファで「あったら嬉しいな・助かるな」ぐらいの金額を設定し、努力でき挫折しない範囲からスタートすることがベターと言えるでしょう。

準備②時間・スケジュールの確認

副業に割く時間は体力的、精神的に無理のない範囲にすることが肝要です。

例えば、「土日のうち、土曜日だけは副業にあてる」「1日1時間をかけて副業をする」などのマイルールの設定をおすすめします。

また、副業の性質によって、特に次のようなポイントも意識しましょう。

アルバイト系:本業先の早退や副業先の遅刻、突発的な休暇が極力生じないように調整
業務委託系:制作や納品までのスケジュール、委託元との連絡調整のための時間確保

関係者との信頼関係の構築、自身の肉体的・精神的な健康維持といったことを必ず心掛けて準備を進めましょう。

準備③投下する自己資金の計算

副業はジャンルによって初期投資の金額が異なります。

そのため、準備段階で副業に費やせる自己資金を正確に計算して、それから無理のない範囲でやること・できることを取捨選択するようにしましょう。

自己資金の設定は、万が一に失敗したとしても、自分にダメージの少ない金額に留めておくことが大切です。

各種のルールを勉強する

副業をする上では、「自己管理の徹底」が大原則です。

そして、自己管理の一環として、自身が副業を行う上で守るべきルールは必ず順守しなければなりません。

確定申告

基本的に、副業で稼いだ収入が年に20万円を超えた場合、確定申告をすることは義務となっています。

なお、住民税については、アルバイトなどの副業で会社に雇用されて得た収入である「給与所得」の場合、市役所によっては「普通徴収」が選択できず、本業の会社から天引きされる「特別徴収」となってしまうようなので、本業の会社に内緒で副業を行うような人は注意が必要です。

確定申告は毎年2月中旬~3月中旬の期間中に行う必要があり、様々なライフイベントと重なることと思いますが、後々、追徴課税を支払うことになってしまっては大変ですので、必ず申告処理をするようにしましょう。

(参考サイト)
副業収入"年20万超え"は税務調査がやって来る(PRESIDENT Online)

社会保険

本業が会社員である場合、基本的には、副業でいくら収入を得ても会社で加入している健康保険料や厚生年金保険料は変わりません。

ただ、2016年10月から、社会保険(厚生年金、健康保険)の加入対象が拡大されたため、従業員数501人以上の企業では、パートやアルバイトであっても、

①1年以上の雇用見込があること
②週の労働時間が20時間以上であること
③1か月の給与が88,000円以上であること
④学生ではないこと

の4つの要件すべてに当てはまる場合は社会保険に加入しなければならなくなりました。

そのため、労働条件によっては副業でも社会保険の加入義務が発生し、本業と副業両方で社会保険料を引かれる、といった状態になることも考えられます。

(参考サイト)
副業で社会保険どうなる 働き方で差、年金保険料増も(NIKKEI STYLE

労働基準法

労働基準法では、1日8時間、1週間に40時間以上働くことを原則禁じており、これを超えて働く場合、会社は、2割5分以上の割増賃金を支払う義務があります。

これは、副業としてアルバイトをするような場合でも適用され、本業・副業の一日あたりの労働時間の合計が8時間を超えた場合は、後の会社に、割増賃金の支払い義務が発生します。

労働基準監督署の調査等でこのことがわかった場合、割増賃金の支払いが問題となって会社とトラブルになってしまう可能性がありますので、事前にそれぞれの会社に説明しておきましょう。

(参考サイト)
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」 Q&A(厚生労働省)

その他

他にも副業の種類(特に商品販売)によっては、次のようなルールにも注意する必要があります。

(主な規制等)
薬事法の規制対象
風邪薬などの医薬品、歯磨き剤や制汗スプレーなどの医薬部外品の販売など

通信販売酒類小売業免許
お酒のネットショップなど

食品衛生法に基づく営業許可
手作りのお菓子の販売など

古物商許可
ネットオークションにおける中古品の継続的な転売など

(参考サイト)
【ネットショップ開業準備】申請・許可が必要な商品まとめ(ECのミカタ)

副業にまつわる裁判とは?

過去には副業に関連して労使間で争ったケースも存在します。

当然、裁判に発展するような事態は望ましくありませんが、もしもの時のため、または自分自身への注意の意味も込めて、知識として知っておいても良いでしょう。

マンナ運輸事件(京都地判平成24年7月13日)
【概要】
運送会社が、準社員からのアルバイト許可申請を4度にわたって不許可にしたことについて、後2回については不許可の理由はなく、不法行為に基づく損害賠償請求が一部認容(慰謝料のみ)された事案。
小川建設事件(東京地決昭和57年11月19日)
【概要】
毎日6時間にわたるキャバレーでの無断就労を理由とする解雇について、兼業は深夜に及ぶものであって余暇利用のアルバイトの域を超えるものであり、社会通念上、会社への労務の誠実な提供に何らかの支障を来す蓋然性が高いことから、解雇有効とした事案。
協立物産事件(東京地判平成11年5月28日)
【概要】
労務者は、使用者との雇用契約上の信義則に基づいて、使用者の正当な利益を不当に侵害してはならないという付随的な義務を負い、原告の就業規則にある従業員の忠実義務もかかる義務を定めたものと解されるとしたうえで、外国会社から食品原材料等を輸入する代理店契約をしている会社の従業員について、在職中の競業会社設立は、労働契約上の競業避止義務に反するとされた事案。

※上記の各裁判の概要は次の資料から抜粋しています。詳細は各判例資料をご参照ください。
(参考サイト)
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」パンフレット(厚生労働省)

その他の副業に関する情報(体験談・意見・トレンドなど)

副業の体験談に加え、「スキルシェア」や「ノマド」、「複業」「パラレルキャリア」といった考え方や社会のトレンドを紹介しています。

時代は日々、移り変わっていきますので最新情報の収集に努めましょう。

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